俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
「最後に行きたいところって、こんなところでよかったのか?」
「こんなところで悪かったな。でも来てくれてうれしいよ」
屋台のおじさんが、にこにこと注文をきいてくれて、私と大輝さんはいつものメニューを頼んだ。
「ん~これこれ、最後にこれが食べたかったの!」
スープをレンゲですくって飲むと、私はその味を噛み締めた。
「最後って、別にいつでも来られるだろ」
「たしかにそうだけど、職場が変わったら足が遠のくかなって。だから食べたかったの。つき合ってくれてありがとう」
「いや、俺も好きだから。ここのラーメン」
私たちの会話を聞いていた大将がうれしそうに、ふたりに一枚ずつチャーシューを乗せてくれた。
「とろこで、転職はどうするつもりだ?」
今日でヘイムダルホテルへの出向は終わり、それと同時にリッチモンドを退職する。よって明日から私は無職になってしまう。
「ブライダル業界にしぼってやっていくつもりなんですけど、このご時世なんで厳しいでしょうね。まぁ、諦めませんけど」
やっとみつけた自分の天職。納得できる職場が見つかるまでがんばるつもりだ。
「まあヘイムダルホテルほどの職場は、なかなか見つからないでしょうけど。でも、応援してくれますよね」
「奇遇だな。ちょうどうちもスタッフを新しく募集するつもりなんだ。優秀な人が欲しいんだけど」
寝耳に水の話だ。しかし気になることがある。
「もちろんまたヘイムダルホテルで働きたいですけど、でも同じ職場だと色々問題になりませんか?」
「年明けから、俺はホテル部門の経営企画室に異動になる。それが親父が出した未央奈との結婚の条件だ。まあ、もともと近いうちに異動する予定だったし、直属の上司でなければ問題ないだろ」
「じゃあ、私。またみんなと働けるですか?」
「まあ、試験にパスしたらだがな」
「うれしい! がんばらなきゃ」
今日しんみりしたのも忘れて、私はがぜん張り切る。
そんな私を見て彼はおかしそうに笑った。
「それともうひとつ、ちょうど俺の奥さんも募集してるんだけど、興味ないか?」
彼の言葉にラーメンを食べていた私は、思わずむせる。