【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
(駄目だ……。耐えろ、俺。今は、普通にオリビアと話をしているだけだ)
 それでも一度溜まった熱を冷ますのには、時間がかかる。
 アトロに心の中で謝罪しつつも、隣に可憐な妖精のようなオリビアがいるのであれば、やはりオリビアに気をとられてしまうのだ。
(今日の髪型も可愛いな。彼女はこうやっておろしている髪型のほうが似合う)
 今日のオリビアは、両脇を少し編み込みにしているハーフアップの髪型である。彼女が動くと、毛先がふわふわと踊るように見えて、つい捕まえたくなってしまう。
(それに……)
 クラークの視線の先が、彼女のドレスの胸元を捕らえた。
(柔らかかったな……。オリビアは気づいていなかったのか? 俺の腕に胸が当たっていたことに)
 あまりにもじっと見つめてしまったのかもしれない。
 オリビアもクラークの顔を見つめてきた。
「旦那様、どうかされました?」
 そう問うてきたオリビアを、つい抱きしめたくなった。
 抱きしめたくなっただけで、抱きしめてはいない。それはクラークの理性が勝った。
 脳内のどこかにアトロがいる。
< 51 / 90 >

この作品をシェア

pagetop