【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 そう思ったクラークは、懐中時計で時間を確認するものの、レストランの予約の時間までにはまだ余裕がある。
「実は、レストランも予約してあるんだ。まだ時間に余裕があるから、君の行きたいところに向かおうか」
 もちろんクラークは、オリビアの欲しがるものは全て買ってあげたい気持ちで溢れていた。
 最後だからそうしてあげたい、と思っているのだ。
 オリビアは「ここから東の方のお店です」と口にした。
 映画館から外に出ると、太陽の眩しさに思わず目を細めてしまった。
 そろそろ空も闇に飲まれる時間だ。今はまだ、オレンジ色に染め上げていて、二人の影を長く作り出している。
 オリビアの金色の髪は夕焼けにきらめいており、眩しく見える。そして夜空のような彼女の瞳も、どことなく輝いて見えた。
 きっとこれからは、夕焼けと夜空を見るたびに、オリビアと過ごしたこの幸せな時間を思い出すのだろう。
「それで、君の望む場所は、こちらの方角で合っているのか?」
 石畳の昔からある路地。ここには、馬車などは入ってくることができないほどの狭い道である。荷物は荷車で運んでいる。
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