【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 オリビアはクラークのことは嫌いではなかった。むしろ好きだ。幼い頃から憧れていた存在でもある。
 気づかぬうちに彼と結婚していた事実に驚きはしたものの、自分を託した相手がクラークであったことに、心の中では「グッジョブ、お父さま」と感謝していた。
 きっと今頃は、天国で母親とイチャイチャしているに違いない。だから、自分も負けてはいられないと、オリビアは常々思っていた。
 日が大きく傾きかけた頃、侍女がオリビアに声をかける。
「奥様、旦那様がお戻りになられましたよ」
 今にも走り出したい気持ちになるものの、それを押さえ込んだ。
 大人な女性は、エレガントに歩くのだ。一歩一歩、丁寧に。
「お帰りなさいませ、旦那様」
 落ち着きを払った声で、オリビアは声をかけた。
「君、か……?」
 クラークは眉根を寄せて、彼女を見下ろしている。
(ふふ、驚いているわ……)
 作戦成功、とでも言うかのように、オリビアは心の中でほくそ笑んでいた。
「旦那様は、愛おしい妻の顔も忘れてしまったのですか?」
 オリビアがくすりと優雅に微笑めば、クラークは戸惑いの表情を見せ始める。
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