【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
13.幼妻の場合(8)
◇◇◇◇

「わかっているとは思うが、離縁の話は無しだ。むしろ、結婚式をやり直したいくらいだ。くそっ……」
 オリビアは今、クラークによって軽々と抱き上げられている。ソファからベッドまでの移動ですら、彼はそうしたいと言い出した。
 頭がくらくらとするのは、先ほど一気に飲んでしまったワインのせいだろうか。身体も熱い。
「はい……」
 だがオリビアは胸がいっぱいだった。
 結婚して二年。やっとお互いの気持ちが通じ合った。
 クラークはアトロとの約束を守るためにずっと彼女を守ろうとしていた。だから、オリビアの誘いになびくことがなかったのだ。
 けしてオリビアに魅力がなかったわけではないと、クラークはこっそりと耳元で囁いてくれた。それだけでも充分である。
 だからオリビアは子供扱いされていたわけではない。全ては、アトロとの約束を守るためだった。
 クラークは真面目な男なのだ。アトロとの約束を律儀に守ろうとしていた。そこが彼のいいところでもあり、悪いところでもある。そして、そんな彼に憧れを抱きつつ、いつのまにか憧れが愛に変わっていた。
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