夏の音を聴かせて
あれから幾つもの夏を繰り返して、私には大切な家族ができた。私は、主人の経営する海の見えるカフェの一角で、駆け出しの画家として、オリジナルのポストカードを作成販売している。

一度は諦めた夢を来斗に再会してから、私はもう一度追いかけている。最近、ようやく文房具店からポストカード販売の声がかかり、少しだが納品先もできた。

元々風景画が好きな、私が、最近描いているのは、全て海をテーマにした絵ばかりだ。

私が、今までに人物を描いたのはたった一人だけ。

それは、主人でもなければ、我が子でもない。海で出会って、海で別れたアイツだけだった。

「ママー」

後ろから、小さな掌が私に抱きついてくる。

来海(くるみ)どうしたの?」 

「ママのえ、だいすき」

ニカっと笑う我が子は、名前のせいだろうか?ふとした瞬間にアイツを思い出す。

また来世も海で貴方に出会いたい、そう願いを込めて、息子にこの名前をつけた。

窓を開ければ、潮風にのって、今日も海は、夏の思い出を運んで来てくれる。

私は、我が子の小さな体を抱き締めると、水平線の向こうで、きっと同じ景色を見ている貴方を想って波音に耳を傾けた。


いつかまた出会えますように。

そして次は、もう二度と離れたりしないように。間違えたりしないように。


私は、来世でもきっと貴方に恋をするから。







2022.12.30 遊野 煌

※画像は、フリー素材です。
< 20 / 20 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:27

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
遊野煌/著

総文字数/34,212

ファンタジー61ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
──鬼と人間が共存する世界。 瘴気を癒すことのできる浄化師の名門、一之宮家の一人娘である真白はその力に恵まれなかった。 そんな真白は、國の占者の選定により鬼狩り師の頂点に君臨する神堂家の嫡男、神堂千隼と政略結婚することになる。 『無能モノ』だと実家では疎まれ、嫁いだ神堂家でも能力の無さを蔑まれて過ごす日々。 初夜もなく、婚儀の翌日すぐに帝都から鬼狩りの命を受けて旅立った千隼とはもう半年会っていない。 そんなある日、鬼狩りの任務から戻ってきた千隼は、真白に離縁を突きつける。 しかしその日を境に千隼は真白のある力に気づいて──。 蔑まれ『無能モノ』と呼ばれた花嫁が必要とされ、唯一無二の存在として深く愛されるまでのお話。 ※フリー素材です。 ※執筆期間2026.3.20〜3.23
100回目の恋カレー
遊野煌/著

総文字数/8,657

青春・友情17ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『ねぇ、恋カレーって知ってる?』 ──『ん? 恋カレー?』 『うん。恋カレーを100回たべたら、好きな人が自分のこと好きになっちゃうんだって』 これは好きなアイツに好きだよって言えない、臆病な私の初恋と恋のおまじないの話。 ※表紙はフリー素材です。コンテスト用に既存作を改稿しました。
バレンタインはキスをして
遊野煌/著

総文字数/5,535

恋愛(ラブコメ)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『23時のシンデレラ』バレンタイン短編です。 結婚して4年目の颯と美弥のバレンタインの様子です…💓 ※表紙はフリー素材です。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop