断る――――前にもそう言ったはずだ
(ああ、まただわ。また、殿下を不快にしてしまった)


 今度は何がいけなかったのだろう? モニカは胸が苦しくなる。

 けれど、原因を考えたところで仕方がない。これまでずっと、モニカの何がいけなかったのか考えてきたが、結論は出なかったのだから。
 モニカは諦めて、ダンスに集中することにする。
 
 そうこうしている間に曲が終わった。
 お辞儀を一つ。二人はゆっくりと手を放す。


「殿下、今夜は楽しい時間をありがとうございました」


 実際は『楽しい』というより、緊張と苦痛を伴う時間だったのだが、正直な気持ちは当然言えない。
 社交辞令を口にして、モニカはニコリと微笑みを浮かべる。


「ああ」


 手のひらで口元を押さえつつ、エルネストが短く返事をした。


「ではまた――――今度は城で」

「はい、また。機会がございましたら」


 実際は父親の執務室にこもっている限り、エルネストとの接点は無いだろう。
 社交辞令と分かりつつ、モニカはしっかりと礼をする。

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