断る――――前にもそう言ったはずだ
「――――もう来たのか」


 エルネストがそう言って、小さく息を吐く。彼は書類を片手に、コーヒーを飲んでいるところだった。


「はい……あの、お邪魔なようでしたら、わたくしは別に席を用意してもらいますわ」

「そんな必要はない。ただ、早いなと思っただけだ」


 彼は書類を部下に手渡し、侍女たちに食事を運ぶよう指示を出す。躊躇いながらエルネストの向かいの席に座ると、冷ややかな視線とかちあった。


「エルネスト様、わたくしの生活に合わせていただかなくて良いのですよ? 寝起きも、食事も、エルネスト様の邪魔をするのは忍びありませんから」


 何度も繰り返しているやり取り。その度に胸を抉られるような気分に襲われる。
 もちろん、モニカとてエルネストに合わせる努力をしているのだが、彼女が生活リズムを早めれば早めるほど、エルネストのそれも早くなる。結果的に、モニカが彼に合わせて貰う形になってしまうのだ。


「合わせているつもりはない。前にも言ったはずだ」


 冷たい視線、冷たい声音。彼は小さくため息を吐く。


「……はい。申し訳ございません」

「謝る必要もないと言っただろう?」

「分かっております。けれど……」

 
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