断る――――前にもそう言ったはずだ
「娘は女官志望でして。十八歳になるまでもう少し時間がございますので、今日から私の小間使いとして、こちらで仕事をさせることになっております」


 宰相はエルネストの表情をうかがいつつも、モニカがどうしてここに居るのかを説明する。


「女官志望……」


 エルネストはそう言ってモニカを見つめる。モニカの心臓が早鐘を打った。

 ほんのりと寄せられた眉間のシワ。険しい表情。彼がモニカを快く思っていないことはあまりにも明白で。けれど、視線を逸らすわけにもいかない。今度こそ不敬で罰せられてしまうかも知れない。


「なるほど――――覚えておこう」


 そう言ってエルネストは踵を返す。
 彼の後ろ姿を見送りながら、モニカは静かに安堵のため息を吐いた。
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