断る――――前にもそう言ったはずだ
「エルネスト様?」


 非常事態のせいだろうか? エルネストの様子がなんだかおかしい。
 モニカはエルネストををまじまじと見つめる。


「モニカ――――僕は君を愛している」

「…………え?」


 エルネストの唇が動く。
 声音がモニカの耳に届く。

 けれど、モニカには言葉を文字通りに受け止めることができなかった。


(愛している? わたくしを?)


 はじめて耳にする言葉ではないというのに、まるで未知のなにかに出会ったかのよう。モニカは呆然と立ち尽くしてしまう。


「僕はモニカを愛しているんだ」


 エルネストがモニカを抱き締める。
 愛しげに。
 とても大切な宝ものみたいに。


「嘘……!」


 信じられない。
 とてもじゃないが信じられる筈がない。
 先程とは比べ物にならないほど、モニカの瞳から涙が勢いよく零れ落ちた。


「嘘じゃない。本当に僕は、君のことを心から想っている」

「だけど……だけど! エルネスト様はいつもぶっきら棒で! わたくしには、全然笑ってくださらなくて」


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