断る――――前にもそう言ったはずだ
 信頼していた護衛に襲われかけたことで気を使われているのだろうか? 
 モニカは小さく首を横に振る。


「すまない。モニカの前ではどうしても素直になれなかったんだ。
君が好きで。好きで堪らなくて。
大切に思えば思うほど、上手く接することができなくなっていた。本当だ」


 エルネストは必死だった。
 普段の冷たい表情でも、ぶっきら棒な声音でもない。
 彼が本心からそう言っていることがモニカにも伝わってくる。


「寝室に君以外の女性が居るのを見つけて、僕は本当にショックだった。共に寝たくないほど、僕はモニカに嫌われていたのか、と。
けれど、君の侍女から『殿下はモニカ様がお嫌いなのでしょう?』と言われて、僕は目が覚めたんだ。
自分の愛情をモニカに上手く伝えられていない自覚はあったが、そんな勘違いまでさせているとは思わなかった。……本当にすまなかった」


 エルネストが勢いよく頭を下げる。
 モニカは思わず「あ!」と声を上げてしまった。


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