※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「紗良さん、まだ起きていたんですね」

 接待があるので今日は遅くなるという連絡があったが、紗良は先に寝ることなくリビングで静流の帰りを待っていた。

「あの……今日は助けてもらえて助かりました」

 紗良はどうしても周平から助けてもらったことについてお礼が言いたかったのだ。
 静流はまったくの無表情でネクタイを解いていった。

「吉住くんと紗良さんって仲が良いですよね?」

 改めて聞かれるようなことでもないが、聞かれたからには一応答える。

「同じ木藤チームですからね。私が二課に異動してきてからの付き合いですが、結構気は合いますね。ほら、同じ猫派ですし」

 実は吉住とは飼い猫の写真を見せ合う仲だ。自分の飼っている猫が世界で一番可愛いという自慢話になることも多々ある。

「彼と付き合いたいとは思わなかったんですか?」
「……いきなりどうしたんですか?」

突然始まった静流らしくない言動に目をぱちくりさせた。静流は苛立ちを隠すように髪を掻き上げた。

「すみません。今の発言は忘れてください。吉住くんの方が紗良さんと年齢も近いし、余計な気を使う必要もないと思ったら……。外で腕を組んで歩くなんて、私もまだしたことないのに……」

 照れ隠しのようにぶつぶつと小声で呟く静流の可愛らしいことといったらなかった。

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