※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
閉店後、風間夫婦との食事を終えた紗良は、静流に今から帰るとメッセージを送った。
すると、風間夫婦のマンションの前まで迎えに行くとすぐに返信があった。
「お疲れ様でした」
「迎えにきていただいて、ありがとうございます」
迎えにやってきた静流と横に並んで夜道を歩いていく。十一月に入ると、街にはチラホラと電飾が灯されるようになってきた。木枯らしが吹き、首をすくめる。加速する冬の気配にどこか侘しいものを感じる。
「弥生さんが今度は静流さんも夕食を一緒にどうかと言ってました」
「私もですか?」
「はい」
「紗良さん、オーナーさんには私達のことをどう説明したんですか?」
「同居人とだけ……。あ、同じ会社だとか架空の妻の話はしてませんよ」
「そうですか」
静流は安心したように、表情を緩めた。特に口止めされていた訳ではないが、やたらめったら明かすものでもない。
「紅茶専門の喫茶店を訪れるのは初めてだったのですが、スピカはとても雰囲気の良いお店でしたね」
大好きなスピカのことを手放しに褒められ、紗良は途端に饒舌になった。