ベタに、切って


「今から?それは無理だけど」

キミエはあきれ果てたような顔をした。

「そんなの分かっているわよ。荷物おかしてもらおうと思っただけで」

そしたら絶対私と旅行行かざるを得ないでしょ、といけしゃあしゃあと言ってのけた。
その清々しい態度に思わず噴き出した。

「部屋とんでもないけど入る?」

キミエは直ぐに頷いた。

荒れ果てた部屋に招き入れ、洗濯物を端に寄せる。恥かしかったが、今はどうでもよかったしどうしようもなかった。ワンルーム故、隠せるような場所もなく。乱雑に散らばっている本や化粧品も机の上に重ねたりしなおす。キミエも眉を潜めることなく豪快に胡坐をかいて座った。

「…珈琲くらいならあるけど、飲む?」

「お言葉に甘えたいなあ」

「ちょっと待っててね」

冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出しグラスに注いだ。牛乳は生憎切らしているがキミエはブラック派だから問題ないだろう。
彼女はトートバックから何冊か旅行誌を取り出して、ローテーブルに並べていた。
珈琲を手渡すと、さんきゅうと半分くらい飲んだ。
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