約束された血の匂い

その11

約束された血の匂い/その11
麻衣



椅子に縛りつけらつけられたアツシの両脇には、二人の若い屈強な男がぴったり張り付いてる

そのやや前面横に勝田さん、そのすぐ後ろにもう一人

更に数メートル離れて私と倉橋さんが立っている

フン、コイツ、あぶら汗びっしょりの情けないツラで、私の方をずっと見てるわ


...



「アツシさん、あなた決してアタマの切れ、いい方じゃないだろうから、きちんと説明しなくちゃね。まずは十分納得してもらってね、それからね」

「ああ…、いやあ、勘弁してくださいよ。俺は何も…」

クソ男の愚にもならない弁明など、ダラダラ聞かされてたらキリがない

私は言葉をさえぎって続けた

「じゃあ、最初から行くわ。去年春、ここであなたは私の親友を犯したわ。その原因は、私たちが相和会の縄張りを侵した。対やくざ組織と括れば、私たちに非があったと認めていいわ。だから、その戒めとして暴行されたんなら、一応はつじつまが通るってこと。では、聞くわよ…」

アツシは「ええ…」と言って2,3回頷いて私の質問を待ったわ


...



「あなた、北田久美の体で果てた。そして、ちょうどあなたの後ろあたりにその証を発射したわね。端的に答えて」

「ええ、出しましたよ、確かに…。あの、やっぱり…」

「余計なことはいいのよ。事実だけ答えれば。それで、事実として他の人は達していない。これはこの倉橋さんが、きちっと本人たちに証言をとってるわ。もう一人、私の体を奪おうとした相馬さんの息子は、私がガラスの破片で切り付け、そのまま病院へ運ばれた。だから、結局イッちゃったのはあなた一人ということになるわ」

「…」

この娘、なにが言いたいんだろうって目をしてる


...



「ええと、これはひとまず置いとくわ。で、その夜、相馬定男は病院から飛び降りて亡くなったわ。当時、相馬さんの跡目に指名されていた人よね。その場にいた人間は、組にとって大事な人を守りきれなかった。それで責任をとらされて、指を詰められたのよね。あなたを除いて。どうして、あなたの指は無事だったの?」

「ああ、それは俺、定男君の友達で、あそこに連れられてたんだ。だから、組の人間じゃなかったってことで、あの時は…。それで、了解してもらってますよ!親分も承知されてますし」

どうだ、文句ないだろうって言いっぷりだわ

なら聞こう

「と言うことは、相和会の組員ではない外部の一般人の立場で、当時16歳の女子高生を強姦したってことね。そういうことで間違いないのね?」

あれ?

勝田さん、下向いて、ちょっとクスッとしてるわ







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