空色のオレと海色のキミ
「空くん」
「海ちゃん」
二人の母に抱かれて対面するのは何度目だろうか。海の見える遊歩道でそれぞれのベビーカーへ戻され、散歩を続ける。
「何回も同じことを言うけれど、空と海って対のような名前で…偶然って面白いわ」
「本当に。うちでも‘双子のカタワレが生まれた気分だ’って主人もお義母さんたちも何度も言ってます」
1歳を迎えるまでは、こうして定期的に‘ママ友’のお付き合いで会っていた空と海は、1歳になると同時に同じ保育園に入園した。
「うみ」
「そら」
お互いの名前だけをやけにはっきりと呼び合う二人は、顔を見合わせてから立ち上がり、顔を見合わせてからヨチヨチと歩き始める。
毎日見ている先生の目には、海よりタッタと歩ける空が海を見守って歩き、空より言葉数が多そうな海が空の雰囲気に合わせて様子を見ているという風に映っていた。
「空くん、海ちゃんがいなくて寂しくなったね。あっちで他のお友達と一緒に遊ぼうか?」
たった1年後、海と家族はふたつ向こうの町の海の祖父母と同居するために引っ越しをした。当然海は、引っ越し先で保育園に通うこととなったのだが、これは海の引っ越しの多い人生の始まりだった。