空色のオレと海色のキミ
空と海
「空がいると…ブルーの心地よい平行線が引かれる感覚」
海の言わんとすることはわかる。海の感覚もよくわかる。
「どっち?」
海の手を取ってアパートまでの道を聞く。何も言わないまま5分も歩かないうちに
「ここ」
海が暮らすアパートへ到着した。
「ここのどこ?」
彼女が無言でひとつのドアを開けると階段だけが見えた。
「ああ、2階の部屋ってことか」
「そう、2階ワンフロアのメゾネットタイプっていうのかな」
「玄関ドアが1階にしかないアパートだな。週末、あの海に一緒に帰ろう。迎えに来るから」
「…」
「また離れるかもしれないと思ってるよな、海?」
海はそれには答えず、ただ手にある鍵をクルクルと撫でている。
「留学する前に別れたのは間違いだったと思ってる。何年でも待っていてくれと言うべきだったんだ。そうして一緒にいるのが、俺と海の本来の姿で、本質で…自然に人格や個性を保てると確信しているよ、俺は。海にもこの感覚がわかるはずで…わかっているはずだ」