空色のオレと海色のキミ


「私は…別れて良かったと…思ってる」

今にも泣き出しそうな表情でありながら、努めて淡々と声を発する海の本心を…心を読みたいと彼女を見つめた。

「どうして?」
「…怖いから…怖かったから…」
「そう…そうか」

十分だ。俺は海を強く抱きしめ

「わかった。海…十分だ。海の気持ちはわかる…大丈夫だ」

そうゆっくりと伝える。

「初めて海を抱いた時から、時々言ってたよな‘怖い’って…その感覚が拭えない?」
「…ぅん」
「海が怖いのは‘交わるはずのない空と海が交わった時に、溺れそうで…それでいて空を突き抜けてどこかへ飛んでいってしまって俺たちのどちらもが消えそう’そういうことだな?」
「…そう…名前に囚われているわけじゃないよ?」
「わかってる。でも二人とも名前にぴったりの人間だったってだけ」
「だからこそ…水平線で二分される空と海…交わらないけど寄り添うものとして存在するのが安心なんだと思う」
「それはこれまでのことだ、海」

海の背中をポンポンと叩いてから腕を緩めて彼女の顔を見ると、海は潤んだ瞳を大きく揺らしている。

「俺は海と交わって、溶け合って…ひとつにもなれるし永遠に寄り添える…そう誓える。もう…この再会のあと離れることは絶対にない。そうすれば、俺たち二人とも消えることなく、色濃く心地よいブルーに二人で染まるだけだ」

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