大江戸ガーディアンズ

廊下に出ると、座敷の中へは微塵も感じさせてはいまいが、かなり(ざわ)ついていた。

和佐が無駄のない動きで、すすっと駆け寄ってきた。

「遊女が一人、見当たりませぬ」

「羽衣姐さんでなんしかえ」

「えっ……いいえ、羽風でござりまする」


奉行所から云われて見世が「囮」に差し出した、先日初見世したばかりの(おんな)だ。

——羽風が、いないなんて……


「と、とにかく……羽衣姐さんがまだ来ぬゆえ、様子見に『部屋』に行きんす」


それにしても、頭が重くて仕方がない。
振袖新造(ふりしん)」のときとは雲泥の差である。

「羽おと、悪うなんしが、あとでまた彦左にでも挿してもらうゆえ、笄を引き抜いておくれなんし」

本当は重たい前結びの帯も外し、十二単よろしく重ねた着物も何枚か脱ぎ去りたいくらいである。
重ね重ね、身軽な振新とは雲泥の差であった。


和佐にまで手伝ってもらい、なんとか笄やら簪やら櫛やらを抜いた美鶴は羽衣の「部屋」へと向かった。

部屋に差し掛かった処で、声が聞こえてきた。


「あんさん、なにゆえわっちに近づくために廓の男衆(おとこし)おとこしになりなんしたのかえ。
それに……わっち以外の(おんな)には『親切心』でしなんしたことでありんせんかえ」

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