大江戸ガーディアンズ
「まあっ」
思わず声を上げてしまった。
「なんと節操のない……」
美鶴には邪気のない少年のごとき笑顔を向けていたと云うのに……
「あの器量であるからな。女の方も放っておくわけがなかろう。
初めて見たときは歌舞伎の役者かと思うたぞ」
「さようでござりまするか。
わたくしは子ども屋の時分から彦左を見ておりますゆえ、わかりかねまするが」
廓で生まれた子が生まれてすぐに預けられるのが、子ども屋だ。
「……そうか、其れは良かった」
何故か上機嫌で兵馬はくーっと一杯呑った。
「それにしても……
何故、彦左は『髪切り』になってしもうたのでござりましょう」
「其れも、奥方様に因があった。
……覚えておるか。奥方様が懐妊された御子を儚くされたことがあったであろう」
美鶴は肯いた。
あれはまだ「舞ひつる」であったとき、近江守の娼方であった羽衣の御座敷に上がっていた頃だ。
「奥方様は男子誕生を強く望まれるあまり加持祈祷に熱心になり、僧侶や祈祷師を手当たり次第に御屋敷へとお呼びになるそうだ」
「御前様はお止めになられませぬのか」
「そもそも御家のための縁組だ。御前様の御心は羽衣にあるしな」
「だからこそ、嫡子となる男子を望まれたのでござりましょうぞ」
「だが、御前様は先代が遺された若様に渡す意志が強い。
亡き先代との約束であるからな」
広島新田藩の四代藩主は、今はまだ元服前ではあるが浅野 粂之助で揺るがない。
とは云え、家臣の中には近江守の子に願いを託す者もいて、奥方様を惑わすのであろう。