大江戸ガーディアンズ

「——存じておりまする。
旦那さまは、いつ何時も姑上様の肩をお持ちになる、と云うことは」

和佐は夫の目をしかと見据え、きっぱりと告げた。


「いや、その……(それがし)はだな、ただ……」

主税はたじろいだ。

天女のごとく神々しき面立(おもだ)ちのはずの妻なのに、まるで般若か夜叉を見ているような心持ちがするのだが——


「それでは旦那さま、ごゆるりとお(やす)みなされませ」

夫の言葉を聞くことなく、和佐はきちっと居ずまいを正すと深々と平伏した。

そしてすっと立ち上がったと思えば、打掛の裾を翻してさっさと座敷を出て行った。


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妻の姿が見えなくなったあと、主税は床の間の前に置かれた脇息に倒れ込むように(うずくま)った。

自ずと「はあぁーっ」と全身からため息を吐く。

厄介なことになった。

なんとかせねば、と思いつつも宿直の御役目を終えた直後の身では、眠くて頭が回らない。


「……ひとまず、寝るとしよう」

傍らには、すでに使用人によって敷かれた夜具があった。

——すべては、起きてから考えることにするか……


されども、さように思ったのも束の間——

間髪入れず、座敷の外から声が掛かった。

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