隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「私は、初めて君と出会った時から、君の虜になったよ」
 チュッと、シーグルードが額に唇を寄せた。笑みを浮かべ、アルベティーナは尋ねる。
「シーグルード様は、いつから私のことを?」
「だから。初めて君と出会った時から……」
「それって……、いつですか?」
 アルベティーナはヘドマン家に引き取られる前は、ここで暮らしていたとアンヌッカは言っていた。そのときにシーグルードと会っているはずなのだが、何しろ幼過ぎてアルベティーナには記憶がない。
「君が、この世に生を受けたときから」
 耳元で囁くと、パクリと耳朶を噛んできた。それには思わずアルベティーナも肩をすくめてしまう。
「シーグルード様……」
「だから、言っただろう? 私は君の虜だと。君に溺れているんだ。君を一目見た時から。ずっと、私の側にいて欲しいと思った。だから、あのとき、君が奪われようとしたときは……」
 それ以上の言葉は続かず、シーグルードが唇を噛みしめている。アルベティーナは、シーグルードの傷跡がある場所に触れた。
「シーグルード様が、私を守ろうとしてくださったこと。お母さまから聞きました」
「ティナ……。そんなところを触られたら、私は……」
 シーグルードは軽く唇を重ねる。
「正式に婚約をしたんだ。何も問題は無いよな」
「シーグルード様……」
「だから、ルディと。これからは、二人きりのときは、そう呼んで?」
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