セカンドバージン争奪戦~当事者は私ですけど?

店を出ようと立ち上がると、ふわり…軽く酔いを感じる。ボトル1本なら大丈夫とわかっていたけれど、あとのプラス半分でふわりとしてるな。

気分が悪い訳でもないし、回りが見えない訳でもない。ただふわりとアルコールが全身を巡っていることを感じるだけだ。家の近くなら夜道を歩いている間にさめるくらいだけれど、電車だな…最後の1杯だけでもやめておけば良かったな。

しっかり歩けることを確かめながら店を出ると

「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

と小さく頭を下げる。大きく下げるのは良くない。

「楽しかったよ、ありがとう」

そう言って私の手を取った江藤さんは

「水だけ買って電車に乗ろうな」

ゆっくりと駅へ向かって歩き始める。

「本当に送ってくれるんですか?大丈夫ですよ?」
「うん?送ればもう少し一緒にいられるだろ?」
「でも…江藤さんの帰りがすごく遅くなる」
「今日中には帰れるくらいだ。それとも…朝まで寝ずに一緒に過ごそうか?」
「…今すぐ寝る自信があります」
「そう?俺は寝かさない自信があるけど?」
「っ…ちょっ…と…そんな近くの必要ないって…聞こえてますっ」

彼は気だるげなセクシーさを全開にして、私の耳元で囁いたのだった。

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