俺様男子はお気に入りを離さない
2.内緒の試験勉強
中間試験を前にして部活動はすべて中止になった。
だけど私はいつもと変わらず美術室へ行く。
部活をするためじゃなくて、静かな美術室で勉強するためだ。

教科書とノートを机に広げてまずは数学から取りかかる。

ガララッと音がして顔を上げれば、御堂くんがきょとんとした顔をした。

「今日は絵描かねえの?」

「中間試験前だから部活は中止になってるよ?」

「ああ、試験か」

御堂くんはいつもの席に座りスマホをいじる。
時おりチラチラとこちらを見ている気がして私は気が気ではない。

「あ、あの、御堂くんは勉強しないの?」

「芋子を見てる方が楽しい」

「み、見ないで」

「そこ、間違ってるぞ」

「えっ?」

御堂くんは私のノートを覗きながら指を差して指摘する。

「どこ?」

「ここ」

隣に来た御堂くんはノートを指でなぞりながら数式を説明してくれる。
ドキリとしたけれど、それよりも説明が丁寧で上手くて聞き入ってしまった。

「あ、そっか、そういうことかぁ」

「簡単な引っかけ問題だ」

「うん、ありがと――」

お礼を言うため顔を上げれば思ったより近い御堂くんの顔。
座っている私の隣に立ってノートを覗き込んでいたみたいで、御堂くんに見下ろされる形になっている。

ふわっといい香りがした瞬間、唇に触れる柔らかな感触。

「お前、可愛いな」

それが私のファーストキスだと気づくまでに数秒はかかった。
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