俺様男子はお気に入りを離さない
生徒会役員選挙での御堂くんの演説はとても素晴らしかった。
普段からまとうオーラだけじゃなくて、この学園をより良くしようという強い意志が感じ取れた。それは決して親からの圧力に負けたから立候補するわけじゃなくて、きちんと御堂くんの想いがあるんだと思う。

その時ばかりは、御堂くんファンの子たちも私と同じように感銘を受けたのか、黄色い歓声は上がらなかった。

結果は御堂くんが大差をつけて当選という、華々しいものになった。
それに伴い、御堂くん人気はますます急上昇。
クラスでもいつも誰かに囲まれている人気者だ。

「御堂くんすごくない?」

「だよね」

菜穂が呆れたように言うので大きく頷いて同意する。

「ちょっと、千花子も頑張りなよ」

「いや、無理だよ。御堂くんとは生きてる世界線が違う」

「何それ、どこの異世界?」

どこって、本当に御堂くんは異次元レベルで人気なんだから。
私なんて平凡で両親だって一般企業で働いてる会社員だし、代々続く何かがあるわけでもない。
そんな私が御堂くんと一緒にいることがおこがましいのだ。

それに、花火大会のことがバレてから御堂くんへのマークは以前にもまして増えていた。親衛隊も取り巻きも、競うように御堂くんを囲って守っている。

放課後だってクラスの女子に呼び止められているのを見るし、そんなときは美術室にも来ない。

御堂くんが美術室に来なくてほっとしている自分と、日常にぽっかり穴が空いてしまって寂しさを感じている自分がいて、その狭間で気持ちがせめぎ合っている。

だけどきっとこれでいいんだ。
もともと美術室では一人で絵を描いていたし、いつも通りに戻っただけなんだ。

そうやって、必死に自分を納得させた。
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