死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。


「き、君……犬は好きかな」



え?こんな時にそんな話題を提示?


震えながらも、高い声の女の子は私に声をかける。



「え、あ、いやあんまり好きじゃない…です」

小さすぎて声が聞こえていないかもしれない。多分先輩だ。緊張する…。


私は犬が苦手だ。あんまり好きじゃないとは答えたが、私は犬が超絶苦手なのだ。

動物園のライオンよりも、私は犬が苦手で怖い。



「私の、犬が…逃げた」



「え、え?」



「内緒で…学校に犬連れてきたら…犬が…に、逃げた」



「は、はぁぁ!?!?マジですか!?」



信じられないほどに大きな声が出た。

廊下に響く。


それは…ホントにやばい。

私の犬苦手精神が……爆発しそうになっている。




「え、あなたの…犬なのに、なんでそんなに叫ぶんですか?」




「…私の犬は、とっても大人しい性格なんだよ。なのに、急にバウッって暴れ出して。
それで、逃げられちゃった」


テヘッと彼女は少し舌をだしていた。



「えええ……っ…どうするんですか」



「うーん!一緒に探してー?!」  



「ええ…いや、えっと」

まずい。頼まれたら断れない精神が出てきた。

大人気な雰囲気を放っているとは裏はたに、キラキラとした目でこちらを見てくる。

…無理だ。




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