【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 ――そして、聖女の容姿だけしっかりと受け継ぎ何の力も持たないリュミエールは、良い物笑いの種にされている。

 彼女自身は代々家に伝えられている修練法をかかさず、二人の姉の倍も三倍も努力をこなしているのだが、小石一つも動かせない。なので周りから《(から)っぽ聖女(せいじょ)》だの《亡霊令嬢(ぼうれいれいじょう)》だのと、色々な場所で陰口をたたかれるようになってしまった。

 そのことをリュミエールはとても悲しく思うが、同時に出来ないことは仕方ないのだと諦めてもいる。

(聖女としては無能でも、国の象徴として少しでもこの容姿が役に立てば……えい!)

 そんな風に彼女は自分を(ふる)い立たせると、ボウルの中の水を顔にパチャパチャと当てた。お湯ですら自由に使わせてもらえないので、冬場はこれが肌に()みるが、ひたすらがまん。

「よし、今日も頑張るわ……! ケイティ、いつも通りにしっかりお願いね」
「はいはい、御嬢様……今日もうんと綺麗にさせていただきますから」

 そうしてけなげに拳をにぎるリュミエールに、ケイティは目を細める。
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