麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ

本郷麻衣、初の挫折と折れかけた心~そして更なる開眼

その1
麻衣



クスリが効いきたようだわ

頭の中がフワフワしてるよ…

...


今日は大きなヤマ場だったが、終わってみれば何のことはない

なぜだか実感がないんだ

妙に冷めている

ただやろうと心に決めたことを、自分にやらせたまでだしって…

そういう淡白な気持ちなんだ

これは、今に始まったことではない

いつもそうだった

これからも同じだろう、きっと…

私はそうやって、目の前に噛みつきながら生きていくんだ

そして、その繰り返しで、やがて死ぬ

なら、私の中の”本当の主”に向かって、もっと挑発しなきゃ

もっと、もっと、どんどん…

どこまでのもんか、見てやらなきゃ

ハハハ…


...


相馬さん、私、止まんないよ

いや、正確には立ち止まることを、自分にさせないでいる…

今、私の頭の中には、次に臨む場面が広がってるんだ

それを考えることで、ギラギラできるんです

そのかわり、今日までのことには、興味がさほどでもなくなっちゃんうんですよ

もう、今日までの展開は過去のことになっちゃって

最近はそういう感覚になると、とても不安になるんです

それって、思い通りになったら、私、終わっちゃうってことじゃないのかしらってね

相馬さん、あなたはどうだったの?

若い頃、私と一緒の感覚だったの?

機会があったら、また聞かせてくださいね、相馬さん…

では、おやすみなさい…


...


そして翌朝は、実にすっきりした目覚めを迎えることができたわ

それにしても、昨日は何とも濃密な1日だった…

加えて、いくつもの収穫があった

とにかく、昨日で南玉連合の組織機能を、概ねは掌握できたよ

都県境最大グループの、”足腰”と”主要臓器”を透かせたのは、大きな成果と言える

結論として、南玉の”それ”は、私の予想を大きく上回るものだった

肝心なところで制御機能が働いているのは、正直、驚きだったし

そして…、今日の夕方には、例の襲撃事件に関連した査問委員会が開催され、私はドッグスの代表として出席したんだ


...



この委員会は、査問役のOB・OG代表が委員会を主導する

さらに、本事案を提議した発議者として、木戸真澄先輩が証人への質疑役で出席

その証人は当然ながら、我がレッド・ドッグスの北田久美だ

さらに、そのドッグスを亜咲さん脱退後に所管することとなった、特攻隊トップの荒子さんが立会人の立場で臨席だ

私は亜咲さんの臨時代理で、いわばドッグスの現場代表として出席している

要するに、南玉連合の執行部はこの委員会に出席を許されていない

次期総長が決定している荒子さんも、そのポストではなく、あくまでドッグスの所管責任者という名目になる

その意味するところは、諸事案の事実究明には、極めてフェアな査問機能が及んでいるということに行き着く

委員会は粛々と運んでいった

久美は思った以上に”役者”だったわ

ヤツはヤツなりに向上心を持っているようだ

所詮、アタマの中は空洞でも、自分の”居場所”を確保するために、必死になっている

まあ、いじらしいよ

バカなりに一生懸命なんだからさ…




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