イケメン総長とキケンな関係 ~出会いは突然の入れ替わり⁉ 愛はそこから始まった~



『それから話は変わるけど、
 ここって茉蕗(まろん)の家の近くの公園だよな。
 公園(ここ)からだと
 俺の家まで三十分近くかかるな』


 わからない。
 龍輝くんの家がどこにあるのか。



 初めて龍輝くんと入れ替わった、あの日。

 そのときのことは。
 覚えていないに等しい。















 思い出す。
 龍輝くんが教えてくれた話を。







 そのとき。
 私(龍輝くんの姿)は。
 出ていなかった、部屋(龍輝くんの部屋)から。
 お手洗い以外。





 ということは。
 なかった、確かめることも。
 外に出て。

 龍輝くんの家の周り(ここ)がどこなのか。
 そういうことを。



 なので。
 わからない。


 私の家の近くの公園。
 そこから。
 龍輝くんの家。

 どれくらいの時間がかかるのか。












 逆に龍輝くんは。


 初めて私と入れ替わった。

 その日。
 登校した、私が通っている学校にも。



 なので。
 把握している。
 私の家の最寄り駅も。










 龍輝くんが言うには。



 私の家の最寄り駅。
 そこから。
 龍輝くんの家の最寄り駅。

 電車に乗って十五分。
 それくらいかかるらしい。


 龍輝くんの家の最寄り駅に着いて。
 龍輝くんの家まで。

 徒歩で五分くらいだそう。





 そして。
 今、龍輝くん(私の姿)がいる私の家の近くの公園。
 そこから。
 私の家の最寄り駅。

 そこも徒歩で五分くらいかかる。







 電車に乗っている時間。
 徒歩の時間。

 それから。
 電車が来るのを待っている時間。


 それらを合計して。
 だいたい三十分くらい。

 そんな感じで計算した、龍輝くんは。
 そう思う。



『茉蕗、
 やっぱり茉蕗を事情も知らない聖夜たちと一緒に居させるのは
 茉蕗に負担がかかって気の毒になる』


 スマートフォン越し。


『だから、
 俺との通話が終わったら、
 俺の部屋(そこ)から出てほしい。
 聖夜たちには
『コンビニに行ってくる』
 とでも言って』


 声は私。


『それで、
 茉蕗が外に出たら連絡してほしい』


 だけど。


『とはいっても、
 そのとき俺、
 電車に乗ってるかもしれないから
 メッセージで頼む』


 龍輝くんの言葉。

 落ち着いてくる、聞くだけで。
 頭と心の中が。



 そして。
 来てくれる、龍輝くん(私の姿)が。


 わかっている、それが。

 心強い、それだけで。





 なので。
 思う、できると。
 待つこと。
 龍輝くん(私の姿)のことを。

 来てくれる、龍輝くん(私の姿)が。
 それまでの間。
 龍輝くんの部屋(ここ)で。
 桐生くんたちと一緒に。


 だから。
 思った、言おうと。
 龍輝くんに。
『私は大丈夫』と。



 だけど。
 そう言ったら。
 思うかもしれない、不思議に。
 私(龍輝くんの姿)と一緒にいる桐生くんたちが。

『何が大丈夫なのだろう』と。


 だから。
 思った、やめておこうと。

 その言葉を言うのは。







 それもあるのだけど。

 言ってくれた、せっかく。
 龍輝くんが気を遣って。


 大切にしたい。
 そんな龍輝くんの気持ちを。

 だから。
「うん」
 そう言って頷いた。


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