夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「お前も、それを食べたらさっさと自分の部屋へ戻れ。また、護衛から魔の一時間の報告があがってくる前にな」
「シャーリーの顔を見たら戻る」
「あまりしつこいようだと、お前の護衛にお前の居場所をばらすからな」
「うわ。ひっど。私から憩いの場を取り上げようとするな」
 どうやらランスロットの執務室は、ジョシュアにとっては憩いの場だったようだ。どの辺が休めるような雰囲気になるのかがわからないが、それでも幼いころから知っている彼からそのように言われることは、少しだけ心がむず痒く感じる。
「まあ、いい」
 ふん、とランスロットは鼻息荒く執務席へと戻った。
 今日の予定を確認する。
 提出しなければならない書類。出席しなければならない会議。そういったことも、前日のうちにシャーリーがまとめてくれている。
 彼女がここに戻ってきてくれただけで、ランスロットの仕事ははかどるようになったし、心身共に負担が減った。
「おはようございます」
 シャーリーが明るい声で執務室へと入ってきた。
「おはよう、シャーリー。今朝もお邪魔しているよ」
 ランスロットが答えるよりも先に、ジョシュアがひらひらと手を振っていた。
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