夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「すごいな。たった十日程で一年分じゃないか。やっとスタートラインに立てたな」
 ジョシュアはまた勝手にお茶の準備をし始める。
「その計算でいけば、あと十日後には元通りってわけか」
 楽観的なジョシュアらしい計算であるが、そうなって欲しいと願っている自分もいた。
「お、今日は菓子が豊富だな。また、屋敷から持ってきたのか?」
「違う。それはシャーリーが買ってきたんだ」
「シャーリーが?」
「お前が言ったんだろ? 二年かけて好きになってもらえたから、どうやってシャーリーに近づいたかを思い出せって」
「そんなこと、言ったか?」
 ワゴン下の籠から勝手にお菓子を取り出したジョシュアは、早速、口の中に放り込んだ。彼が食べたのはただのクッキーである。
「まあ、いい。とりあえず、シャーリーとの関係は順調だ。お前に心配されるまでもない」
「またまた。すぐに弱音を吐くくせに」
 ちっ、ともう一度ランスロットは舌打ちをした。
 シャーリーの机を運んだため、少しだけ喉が渇いてしまった。ジョシュアの出がらしのお茶を淹れると、一気に飲み干した。出がらしの茶は、茶葉が冷えているからお湯を注いでも温く感じる。
< 124 / 216 >

この作品をシェア

pagetop