夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 ランスロットがいないだけでいつもの夕食も味気ないものとかわってしまう。
 彼と一緒に食事をしても、会話が弾むわけでもないのに、ただそこにいることが重要だったのだ。
 そんなシャーリーに気を使っているのか、イルメラは今日の食事についていろいろと説明をしてくれる。だが、彼女の声は、シャーリーの左耳から右耳へとただ通り過ぎるだけだった。
 ランスロットとは、屋敷にいるときも食事の時間くらいしか顔を合わせない。そのときに会うことができなければ、意図的に会おうとしない限り、会う機会はないのだ。
 それでもシャーリーはランスロットともう少し話をしたいと思っていた。
(団長の手に触ったら、何かを思い出せそうだった……)
 ランスロットの手に触れたら懐かしい思いが込み上げてきた。もう少しで何かが掴めそうだったのに、ジョシュアが現われた。
「イルメラさん。団長が帰ってきたら教えてもらえますか?」
 シャーリーの言葉に、イルメラは顔を綻ばせる。
「もちろんです、奥様」
 食事を終えたシャーリーは自室に戻る。食後は読書をすることが彼女の日課となっていた。ここでは衣食住が全て揃っているため、シャーリー自らそのために何かをしなければならないということがない。
 食事も洗濯も掃除も、シャーリーがやらなくても使用人がやってくれる。
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