夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 彼女と同じ馬車に乗り、王城へと向かう。
 ランスロットが顔をあげると、斜め前にシャーリーがいる。
 この距離は彼女の五歩圏内に入っている。そして、彼女は嫌がっている様子もない。ランスロットはそれを確認できたことに、ほっと胸を撫でおろした。
 シャーリーと二人で馬車から降り、シャーリーと二人でエントランスを歩き、二人で執務室に入る。
 シャーリーはランスロットの後ろを歩こうとしていたが、ランスロットの本来の目的は彼女の護衛である。できれば彼女には、自分の視界に入る範囲内にいて欲しかった。
 なんとか誤魔化して、ランスロットが彼女の後方を歩くことに成功した。
「早速、お茶を淹れますね」
 シャーリーは、朝議を終えたランスロットが執務室に入ってくると、いつもお茶の準備をしてくれた。今日は朝議をすっぽかしてしまったが、シャーリーにとっては毎朝のやるべき仕事に分類されているのだろう。
「シャーリー。お茶は俺の分の他に、もう一人分、準備してくれないか?」
 ランスロットの勘が正しければ、そろそろジョシュアがやって来る。
「おい、ランス。調子はどうだ?」
「おはようございます、殿下。今、お茶を準備しますので」
 ランスロットが声をかけるよりも先に、シャーリーが先に声をかけていた。
「おはよう、シャーリー。気を使わせて悪いね」
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