夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
◇◇◇◇

 シャーリーがランスロットと同じ寝台で寝始めてから、十日が経った。
 初めはなんとなく照れ臭かったが、十日も経てば慣れてくる。
 同じ馬車に乗って王城にまで行き、同じ場所で仕事をして、また同じ場所で帰宅する。いつもどこでもランスロットが側にいる。
 普段のシャーリーであれば、こんなに他人と行動を共にしていたら息が詰まる思いがするのに、なぜか気にならなかった。
 そう、彼は気にならないのだ。悪く言えば空気のような存在かもしれない。いなくてはならないけれど、その存在のありがたみになかなか気づかない存在だ。
 ランスロットにそのことを伝えるつもりはないが、恐らく口にしたとしても彼は怒らないだろう。むしろ、喜ぶに違いない。
 そんな彼に、ちらりと視線を向ける。
 ランスロットの専属事務官として、彼の執務室に常駐しているシャーリーだが、彼女の席は執務室の入り口の側にあり、ランスロットの執務席からは充分に離れている。
 だから、たまにちらっと彼を見つめても、彼には気づかれないことの方が多い。
 だが、今、シャーリーはランスロットに相談するか否かで悩んでいた。
 基本的に、ランスロットは常シャーリーの側にいる。十日前からそれは突然始まった。
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