夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「時間外は25%の割増になるので、頑張ってください」
 シャーリーがブラムに向けてそう言うと、彼は「やっぱり、シャーリーだな」とニヤっと笑った。
「おい、ブラム。シャーリーをシャーリーと呼ぶなとあれほど言っただろうが、うっ……」
「団長、騒ぐと傷に触りますよ。じゃ。また明日。団長は怪我人だから、今日はゆっくりとお休みください」
 ブラムは手を振って去っていく。先ほどランスロットに刃物を振り上げた男は、騎士たちに拘束され、連れ去られていった。
「ランス。怪我の手当てを。歩ける?」
「大丈夫だ。ただのかすり傷だから」
 扉を開け、エントランスに入ると、近くのソファにランスロットを座らせた。
 二人の帰りを待っていたセバスは、すぐに他の使用人へ指示を出す。
「ランス。上着を脱いで」
「こうやって、君に手当をされるのも悪くはない」
「何、馬鹿なことを言ってるのよ。あのときだって、あなた、狙われたのよ? もう少し、自覚を持ちなさい」
「くっ」
 縛り上げた傷口を緩めると、ランスロットは顔をしかめる。
「ほら、もう。ばっさり切られちゃってるじゃないのよ」
 幸いなことに、皮膚をかすめただけで、縫うほどの怪我ではなかったようだ。
 シャーリーはセバスから救急箱を受け取ると、消毒をして傷口にガーゼをあて包帯を巻いた。
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