夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 シャーリーは、先ほどレイモンが渡した薬を、彼に見せた。ランスロットはそれを受け取ると、くんくんと匂いを嗅いで、中身を確認する。
「嫌な匂いだ。塗りたくないな」
「わがまま言わない」
「シャーリーが塗ってくれるなら、我慢する」
「もう」
 シャーリーは頬を膨らませて薬を奪い返すと、ガーゼや包帯などが入っている箱に一緒にいれた。
 そこへ料理をのせたワゴンを押したイルメラがやって来た。
「食事をお持ちしました。旦那様もお目覚めになられましたか」
 事務的な口調でありながら、言葉の節々からは安堵した様子がうかがえる。
「イルメラ。食事のワゴンは、こちらに持ってきてもらえるかしら? ランスもお腹が空いたみたいで」
 イルメラはシャーリーの言葉に従い、ワゴンを寝台の隣に置いた。
「では、私は失礼します。何かありましたら、お呼びください」
 ようするに、あとは二人で仲良くやってくれとのことだ。
 イルメラが部屋を出て行った途端、ランスロットは口を開けていた。
「どうしたの?」
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