夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「もっと、他にも呼び方があるだろう?」
「なんでだよ。昔からシャーリーのことはシャーリーと呼んでいたんだ。ハーデン事務官とでも呼べばいいのかよ」
「そうしろ」
「やだよ。お前のことを呼んでいるみたいで気持ちが悪い」
 ブラムが自分の身体を抱きしめた。
「だが、シャーリーは駄目だ。呼び捨てにするな」
「じゃ、シャーリー嬢? 人妻だけど、そう呼べばいいのか?」
「ハーデン夫人……」
「それ、お前の願望だろうが」
 話し合いの結果、シャーリーのことは「シャーリーさん」と呼ぶことで妥協した。
「てかさ。まさか、シャーリーさんが団長と結婚するとは思わねべ? オレたちだって狙っていたのによ」
 両手を頭の後ろで組みながら、ブラムは歩き出す。ランスロットも練習場をぐるりと見回してから、ブラムに追いつこうと大股で歩いた。
「シャーリーは男性恐怖症だ」
「だからだよ。男の中の男。一番、獣くさい男が選ばれるとは誰も思ってないだろ? オレだって、まだ五歩圏内に入れないんだぜ?」
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