夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「思い出してください、団長。シャーリーが団長の専属に決まるまでは、専属不在だったじゃないですか。シャーリーが引き受けてくれたからこそ、そこが埋まったんですよ」
 ランスロットに専属事務官がついていなかったというのは有名な話だ。それは彼の見た目が大きく関係している。女性事務官から見たら、彼は怖いのだ。もちろん、女性だけでなく男性からも怖がられている。
「今でも、シャーリーが手伝ってくれていたから、仕事が回っていた点もあるのだが。事務官不在となれば、俺の仕事は回らない……かもしれない」
 かもしれない、ではなく確実に回らない。溢れる。特に、金勘定の書類が。
「う~ん、困りましたね」
 アンナは腕を組む。事務仕事だけでなく、王城で働く者たちが円滑に働ける環境を作るのも、事務官の役目なのだ。
「事務官の責任ある立場から言わせてもらいますと。できればシャーリーにはそのまま団長付きの専属で仕事をこなして欲しいのですが」
「だが、彼女は二年前の彼女だ」
「それは、記憶を失っているからですよね? 記憶さえ戻れば、何も問題はないわけですよね」
 アンナの前向きな発言に、ランスロットもはっとする。彼女が言っていることは間違いではない。
「むしろ、団長と一緒にいた方が記憶は戻ったりしませんかね? 荒療治という方法です」
 同じ内容を他からも聞いたような気がする。
「だが、荒療治がいきすぎて、俺が嫌われてしまったらどうする?」
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