夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 なんとかシャーリーの机の位置が決まったところで、ランスロットが隣の部屋に戻ると、ジョシュアが勝手にお茶を淹れて飲んでいた。
「いい加減、自分のところに戻れ。そろそろ、警護の奴らが探し回るんじゃないのか?」
「大丈夫だ。書置きしてあるから。あいつらが迎えにくるまでここにいよう」
 ランスロットは、ちっと舌打ちをする。だからといってジョシュアを追い出すようなことはしない。
「俺の分のお茶はないのか?」
「お前なぁ。この私にお茶を淹れろと?」
 それでもジョシュアは笑っている。
「仕方ない。シャーリーの復帰祝いに、私自らお前に茶を淹れてやろう」
「高そうな茶だな。そう言いつつ、シャーリーが来るまでここに居座るつもりなんだろう?」
「なんだ。お見通しか」
「お前の考えそうなことくらい、俺だってわかる」
 ランスロットの言葉にジョシュアは口元を緩めた。
「そうそう。そこの下にお菓子、あるよな。出していいか?」
 ジョシュアはお茶を淹れながらティーワゴンを指さした。ランスロットは苦々しい顔をする。
「お前が菓子を準備するなんて珍しいじゃないか」
「当たり前だ。今日からシャーリーがここで仕事をするんだから。休憩時間に一緒に食べるつもりで持ってきたんだ。お前の分はない」
「そういうな。たくさんあるだろう?」
 ジョシュアがワゴンからお菓子の入った籠を取り出そうとしたとき、扉を叩く音がした。
「はい。開いている」
 ランスロットが答えると、扉がそろりと開いた。
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