オフクロサマ
☆☆☆

「とんでもない現場に遭遇してしまったね」


大田家へやってきたふたりは口数が少なかった。


テーブルに置かれたお茶に手を伸ばすこともなく、さっきの光景に身を震わせる。


さっき安喜くんがリビングにやってきたものの、大田が自室へ戻るようにと言っていた。


「いえ、大丈夫です」


裕貴はそう言ってみたものの、泡を吹いて倒れた様子は今での目にこびりついていて離れない。


「さっきの人は大丈夫なんですか? 救急車とか、呼ばなくていいんですか?」


智香の質問に大田は左右に首を振った。


「この村までは車で乗り入れることはできない。救急車を呼んだとしても、30分は歩いて行かないと合流できないんだ」


「でも、そんなこと言ってる場合じゃないですよね!?」


それじゃなんのための緊急車両かわからない。


なにが原因でこの村に車が入れないのか知らないけれど、そういうことは臨機応変にやっていくものじゃないんだろうか。


「そもそも、あの男は助からなかったよ」


大田の言葉に智香は絶句してしまった。

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