幼馴染みの鍵が開いた瞬間から溺愛が止まらない
「どういうこと?」
 不機嫌な顔をした奏ちゃんが、聞いた。
「あの、篠原さんの会社に兄が勤めてるんです。兄の事務担当されてるんですよね?」
「ええ。驚いた。こんなことあるんですね。世間は狭い……。」

「で?意中の、人って?」奏ちゃんが低い声で聞く。
「はい。え?兄が篠原さんにアタックしたって先週聞いたんですけど……。」
「……。」
「……。」
 奏ちゃんとふたりで顔を見合わせる。
 気まずい……。あーもー、何のために来たのよ‼️

「ごめんなさい。お会いできたから、興奮してしまいました。菜摘さんから、幼馴染の篠原さんが兄と同じ会社なのは聞いていたので。そうしたら、兄が嬉しそうによく話してる人が同じ人で聞いてみたら……兄ってすぐわかるんですよね、顔に出るから……つついたらビンゴで。」

 奏ちゃんは何も言わず、コーヒーカウンターに入っていつものキリマンジャロを入れ出した。
 私はカウンターの指定席に座る。
 コーヒーが出された。何も言ってくれない。

「木下さん、もうすぐ9時になるから、そろそろ片付けよう。緑は放っておいていいから。」
「……はい。」
 ちょっと戸惑った顔をこちらに向けながら、ふたりでカーテンの中に入っていく。

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