しぃぴぃ~彼は年上のCPが好き?~

2.あの人と後輩

水曜日の午後、Books桜堂(さくらどう) 木河(きかわ)支店では、加村悠輝がいつも通りアルバイトに励んでいた。

ラックに並べられた雑誌を、きれいに陳列していく。

旅コーナーにまで来ると、ふと表紙に書かれた文字が目に入った。


東京 新橋 観光ガイド


「にいばし……。」

口に出してしまってから、悠輝はハッとして、顔が少し赤くなった。

キョロキョロと周りを見渡す。

平日の店内は、週末に比べると、閑散としている。

グルメ雑誌を立ち読みしている若い女性、文庫本コーナーでどの作品を買おうか迷っている様子の中年男性。

どの客も自分の世界に入っていて、悠輝の呟いた言葉は聞こえなかったようだ。

「『しんばし』だよな。」

そうだ。

東京の地名の「新橋」は、こう読むんだった。

感じを読み間違えた自分に、悠輝は言い聞かせた。

「全く、何を考えてるんだか……。」

もう一度呟いていると、背後に気配を感じた。

「いらっしゃいませ!」

振り返って、反射的にその人物に挨拶をする。

「あ。」

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