「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「そんな心配はいらないわ」

 侯爵夫人がやわらかい笑みとともに言った。

「わたしたちが心配しなければならないのは、バルとエルマのこと。これまで、公の場でどれだけやらかしてきたことか」
「ナオ、妻の言う通りだ。子どもたちのせいで仕事をクビになりそうになったことが一度や二度じゃない」
「大げさですね、父上。愛する妹にちょっかいを出す不埒者を懲らしめただけです」
「そうよ、お父様。レディはレディで面倒くさいし、ジェントルマンはジェントルマンで面倒くさいんですもの」

 エルマは、こちらを向いて舌をペロリと出した。

「お仕事をクビ?」

 そういえば、侯爵がなにをしているのかきいていない気がする。

「一応、外務卿だよ」

 侯爵がさらっと言った。一瞬、彼の言葉が理解出来なかった。

「が、外務卿?」

 そんなにすごい方だったのね。

 わたしの中では、外務卿は他国を相手に活躍するやり手の官僚というイメージがある。
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