「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「侯爵夫人。わたし、心の底からこの国に来てよかったと思っています。お聞き及びと思いますが、わたしは、家族や国に捨てられたようなものです。そんなわたしに手を差し伸べてくれたのが、フランコ様やカスト、それからエルマとバルです。それは、やさしくしてくれたとか親身にしてもらったとか、そんなありきたりな言葉で片付けられるものではありません。わたしにとって、彼らは命の恩人と言っても過言ではありません。侯爵夫人は、その四人を育てられたお母様です。申し訳ありません。うまく伝えることが出来ないのですが、とにかく、四人とも素晴らしい人たちです。フランコ様とカスト同様、エルマとバルを尊敬しています。彼らを見習わねばと、心から思っています

「ナオ、ありがとう。そう言ってくれてうれしいわ」
「生意気で申し訳ありません」
「そんなことないわ」

 侯爵夫人の手が、わたしの頬をやさしく撫でてくれた。

 そのあたたかい手に、思わずジンときてしまった。
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