「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「踊ってくれないかい?」

 急な展開に思考能力が追いつかない。それでも、なんとか小さく頷くことは出来た。

 差しだされている彼の手を取ると、彼の美貌がドキッとするほどやわらかくてやさしい笑みで彩られた。

「デボラ。ナオは、皇妃になってもらいたくて招いたんだ。聖女とか押し付けられたとか、そんなことはいっさい関係がない。アロイージ王国の宮殿で彼女を一目見た瞬間、運命の女性(ひと)だと確信した。だから、招いたんだ」

 フランコも大変ね。こんなふうに演じなければならないんですもの。

 そう思った瞬間、彼が間を詰めてぴったりくっついてきた。

「ナオ、おれは本気だ。こんなところでなんだけど、いま言ったことは本心だ」

 彼は、そう右耳にささやいてきた。

 だけど、信じられない。疑う以前に、そもそもそんなことがあるはずがない。

「というわけだ」

 彼は、デボラに勝ち誇ったような笑みを浮かべてみせた。

「カスト。おまえもエルマに挨拶をしないか」

 それから、フランコはカストに声をかけた。
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