「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

皇宮にて

 カストは厩務員に事情を説明した上で、ルーポの世話をお願いしてくれた。

 荷馬車の方は、厩舎で使ってもらえるらしい。

「ルーポ、また来るわね。厩務員の人たちを困らせないでね」
「ブルルル」

 ルーポの鼻筋をなでながら声をかける。

「立派な黒馬ですね」

 そう声をかけてきたのは、四十代後半くらいの立派な体格の男性である。

 つなぎの作業服の上からでも筋肉質なことがわかる。

 すっごく渋い男前で、右頬に刃物による傷痕が走っている。

 彼は、青鹿毛の立派な馬を連れている。
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