「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 フランコの美しい顔を見ながら、大いに納得した。

 人の本音や本性に晒されれば、だれだって精神を病んでしまう。

「だが、ナオ。きみの心はのぞけないな。聖女だからか、それとも他に何かあるのかはわからないが」

 そうなのね。

 よかった。ほんとうによかった、とホッとした。

 これだけフランコのことを怖れていることを知ったら、彼は傷ついてしまうかもしれない。

 ってバカね。わたしごときが怖れたって、彼は痛くもかゆくもないわよ。

 心の中で、自分自身に対して苦笑してしまった。

< 42 / 175 >

この作品をシェア

pagetop