「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「とにかく、これだけはわかってほしい。あの場できみに言ったことは、その、『不要だ』という言葉だが、けっしてきみのことではない。なんていうか、きみという女性(ひと)のことではない」

 先程までとは違い、しどろもどろに説明しようとするフランコを見ながら、彼は噂とはまったく真逆の人であるということに気がついた。

 そういえば、わざとそんな噂を流していると言っていたわよね。

 帝国の内外に「竜帝は冷酷非情」と噂を流せば、いろんな面で抑止力になる。

 だた、その噂がとんでもなく尾ひれがついてしまっているだけなのね。

「陛下、お気遣いありがとうございます」

 笑みを浮かべて彼に一つうなずくと、彼はホッとした表情になった。

「ところで、ナオ。きみの守護の力がなくなったら、アロイージ王国はどうなるんだ?」

 フランコに問われ、わたしは率直に答えた。

 隠したり偽ったりする必要はない。
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