「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「女のヒステリーって、イヤよね」

 公爵令嬢たちから離れて席につき、スイーツをもくもくと食べている人がいる人が言った。

 彼女は、最初からそこでスイーツを食べ続けている。

 だからこそ、ずっと気になっていた。

 いま、彼女は手に持つフォークを振りつつ爽やかな笑顔でいる。

 口の端にクリームがついていることに気がついた。

 彼女は、ガンドルフィ公爵令嬢同様髪と瞳がきれいなブラウンである。公爵令嬢にひけをとらないほどとってもきれい。

 公爵令嬢は派手できつめなきれいさだけど、彼女は地味でやわらかいきれいさね。

 彼女の恰好がドレスではなく乗馬服姿なので、よけいに気になっていた。

 たしか、エルマ・ボルディーガという名前よ。

 公爵令嬢の名がデボラ・ガンドルフィってかろうじて覚えている。だけれども、他の五人のご令嬢の名前は覚えていない。というよりかは、覚える気もないので右から左へ抜けてしまっている。

 でも、彼女だけは覚えている。彼女は、他のご令嬢とは違っているように思えたから。

 もちろん、いい意味でだけど。
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