無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
「率直に気持ちを伝えてみたらいいのではないかと……?」

「簡単に言いますけど、告白するのも勇気が要りますからね? 志賀さんはできます?」

 自分に置き換えて考えてみれば、たしかに彼女の言う通りだ。相手がどういう反応を示すか予測不能ならばなおさら。
 振られるのが怖いのは人間として普通の感情だから。

「まぁ、志賀さんにアプローチされたら、たいていの女性は首を縦に振りそうですよね。イケメンですもん。その女性とはうまくいきそうなんでしょ?」

「僕に対して好意があると思っていたのですが、過信しすぎた気がします。……正直よくわからないんですよ」

 あの夜の神野さんがすぐに頭に浮かんでくる。
 なにか相談したいことがあったのに、落ち込んでいる俺には話せないと彼女が判断を下したのなら、頼りにならないダメな先輩だと失望したのかもしれない。
 もしも彼女の中に淡い恋心があったのだとしても、今は全部消えて無くなっている可能性も大いにある。

「私たち、お互いに不器用で意気地なしですね。私は特にプライドが高い分、怖がり」

 かわいらしく肩をすぼめて四方さんがフフフと笑う。
 四方さんほどの美貌なら、もっと自信満々でもおかしくないが、人は見かけによらないものだ。

「いいことを思いついたんですけど、私たち協力し合いませんか? わざと恋人同士みたいに親しいフリをするんです」

「それを相手に見せつけて、嫉妬させる計画ですか?」

「向こうの恋心を焚きつけましょうよ」

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